>> 2014年12月




2014年12月1日(月)

「──……?」
うにゅほが、ハンガーに掛けてあった俺のコートを指さした。
「これなに?」
「あ」
ポケットから黒い袋がはみ出している。
忘れていた。
ここ数日は、ジャケットを羽織ることが多かったため、思い出すきっかけがなかったのだ。
「……うん、いつものおみやげだよ」
「おー」
友人の恋人による、うにゅほへのプレゼントという名の一発ネタである。
ああ、デスクの引き出しがどんどん混沌じみていく。
うにゅほが喜ぶからいいんだけど。
「あけていい?」
「いいよ」
既に中身は検閲済みだ。
「♪~」
機嫌よく、うにゅほが袋に手を突っ込む。
「……だいぶつ?」
「大仏」
それは、大仏をかたどったボールペンだった。
ラベルに〈大仏 BALL PEN〉と印字されているのが、いささか面白い。
「かきにくそう」
「そうだな」
利便性を求めてこの形になったのなら、メーカーの正気を疑う。
「まだある」
再び、袋に手を入れる。
「……いえす・きりすと?」
「キリストだな」
「これもボールペン?」
「ボールペン」
「まだある」
三度、手を入れる。
「……あ、ふぁらお!」
「ファラオだな」
「ふぁらお、かっこいいねえ」
「カッコいい……、か?」
たしかに、大仏やキリストと比べて垢抜けた印象はあるし、なにより赤銅色に光り輝いている。
カッコいいかどうかはわからないが、なくはない。
「なんかかいていい?」
「ああ」
メモ帳を取り出し、うにゅほに手渡した。
「ふぁー、らー……」
うにゅほの声が、一瞬で沈む。
「……ふぁらお、あしじゃまでかきにくい」
「ああ……」
見るからに書きにくそうだもの。
「かっこいいのにな……」
残念そうなうにゅほの呟きと共に、三本のボールペンもまた死蔵される運びとなった。
とっぴんぱらりのぷう。



2014年12月2日(火)

弟の誕生日ということで、新しくできたステーキハウスへと赴いた。
会計後、
「いやー、熟成肉美味しかったな」
「おいしかったねえ」
俺とうにゅほが満足の言葉を述べる横で、
「いいなあ……」
と、弟が溜め息をついた。
「ヒレステーキも美味かったじゃん」
「おいしかったよねえ」
「いや、美味いことは美味かったんだけど──」
冬の寒空を見上げ、呟くように言葉を続ける。
「……ヒレステーキって、冷めたらパサパサになるのね」
初めて知ったらしい。
「素直にサーロインとかにしとけばよかった……」
「──…………」
「──…………」
うにゅほと顔を見合わせる。
「あ、でも、ロッシーニ風だからフォアグラ乗ってたじゃん」
「ふぉあぐら、はじめてたべた」
「そこそこ美味しかったよな」
「おいしかった」
「……うん、ひとくちめは美味かった」
くどかったらしい。
「こう、中間くらいのものを、熱いうちに食べたかった……」
「──…………」
「──…………」
再び、うにゅほと顔を見合わせた。
「……それ、たぶんだけどさ」
ためらいがちに口を開く。
「一緒に食べるもの、だったんじゃないか?」
「……一緒?」
「ヒレステーキとフォアグラ、一緒に」
「──…………」
弟の瞳に理解の光が灯る。
「ああ……!」
吝嗇家の弟には厳しすぎる事実と価格設定だったらしい。
「また来よう、また来よう、今度はおごってやるから」
「うん、うん、かえってケーキたべよ」
世話の焼ける弟だが、帰途には既に立ち直っていた。
切り替えが早いのは長所である。



2014年12月3日(水)

「銀の匙って、12巻まで出てるのか」
「ほんとだ」
五千円、と脳内で勘定する。
弟への誕生日プレゼントとして、好きな漫画を一揃い買ってやることにしたのだった。
名目上はプレゼントだが、実質的には共有財産である。
銀の匙は俺も読んでみたかったので、むしろ都合がいいとさえ言える。
「××、母さんと一緒にアニメ見てたよな」
「うん」
「面白いん?」
「すー……ごい、おもしろい!」
一拍溜めるほどらしい。
「俺も、一緒に見ればよかったかもなあ」
「なんでみなかったの?」
「いや、成人男性として、母親とアニメを見ることに多少の抵抗があるというか」
「……?」
「うん、わからなくていい」
銀の匙の単行本をどさどさとカゴに入れ、思案する。
「どうせだから、他の漫画も買っとこうかな」
「ほかの?」
「友達から借りて面白かったやつとか、××に読ませたいのもあるし」
「おー……」
うにゅほの瞳が期待にきらめいた。
「とりあえず、ぐるっとひとまわりして決めようか」
「うん!」
広い店内を散策しながら、完結したシリーズや新刊などを片っ端からカゴに詰め込んだ。
そして、
「──12,216円になります」
「あ」
やべ、と思った。
財布のなかに一万円札しか入っていない。
俺が全額支払ったあと、うにゅほから千円ほど戴こうと思っていたのだ。
うにゅほも財布を持ってきているので、さしたる問題はないのだが──
「◯◯、これ」
うにゅほが俺の手を取り、二枚のカードを握らせた。
「……図書カード?」
「はっせんえんぶん」
「あ、誕生日プレゼントのやつか」※1
「うん、ぜんぶいいよ」
「──…………」
うにゅほが誕生日に貰った図書カードで、弟への誕生日プレゼントを購入する。
金の流れが不健全な気がするが、こんな機会でもなければ図書カードなんて使わないような気もする。
「……ま、いいや。ありがとな」
「うん」
二十冊余りの漫画を収納するために、書棚を整理しなければ。

※1 2014年10月15日(水)参照



2014年12月4日(木)

「はー……」
凍えた指先を吐息であたためるうにゅほに、手袋を外して手渡した。
「ほら」
「……ありがと」
うにゅほが自嘲気味に笑顔を作る。
ハンドルを掴み直し、その冷たさに驚いたが、すぐに慣れた。
「とうとう降っちゃったな……」
車窓から覗く光景に、思わず溜め息をつく。
一面の──と言うには足りない、半面ほどの銀世界。
アスファルトの路面に降り積もった雪は既に解け、灰色を黒く濡らしている。
「ねゆき、なるかな」
「どうかな」
「◯◯、つもらないほうがいい?」
「──……まあ、うん」
「?」
歯切れの悪い返答に、うにゅほが小首をかしげた。
「積もらないほうがいいのは間違いないけど、ほら、ここ北海道じゃん」
「うん」
「積もらないことなんて、まずないじゃん」
「うん」
「……積もらないなら積もらないで、力を溜めてそうで怖い」
「あー……」
うんうんと頷く。
「こわい」
「怖いだろう」
「おきたらまっしろ?」
「真っ白で、真っ平らかもしれない」
「まったいら……」
「道も、家も、電柱も、みんな真っ白で真っ平ら」
「はー……」
うにゅほが嘆息を漏らす。
「そうなったら、すごいね」
「生き埋めだな」
「……でも、ちょっとみてみたい」
「生き埋めだぞ?」
「ちょっと、みるだけ」
「──…………」
実を言うと、俺もそういうの嫌いじゃない。
「……高層ビルの屋上から、雪で埋まった世界を眺めるとか」
「おー」
「ゆるい弧を描く地平線ならぬ雪平線に太陽が沈んでいったりとか」
「いい……」
「そういうの好きか」
「すき」
うにゅほと固く握手を結び、互いにこくりと頷いた。
気が合うのか、気が合うようになったのか、それはどうでもいいことである。



2014年12月5日(金)

玄関先にスノードームが飾られていることに気づいたのは、うにゅほがそれを手に取ったからだった。
「なんだ、それ」
「すのーどーむっていうんだよ」
それは知っている。
「いや、どうしたのかなって」
「……?」
「いつの間にかあったから」
「うん、いつのまにかあった」
誰が飾ったのか、詳しくはうにゅほも知らないらしい。
恐らく、母親が買ってきたのだろう。
プレゼント箱の上に腰掛けるサンタ衣装の白熊──なんて、いかにも母親らしいセンスだ。
「はー、寒い寒い……」
レジ袋を握り直し、玄関をくぐろうとしたときのことだ。
「──ぬう!」
「!」
背後の奇声に背筋が伸びる。
振り返ると、うにゅほがスノードームを思いきりシェイクしていた。
「ぬー……!」
数秒ほど右手を振り続け、
「──……ほっ」
と、やりきった顔で元の場所へと戻した。
ドームのなかで、虹色の雪片がきらきらと渦を描いている。
「いきなりどうした……」
「おとうさんが、かえってきたらこれふりなさいって」
「あー……」
父親め、また適当なことを。
「××、そんな──」
そんなこと、いちいち真に受けなくていい。
そう言いかけて、口をつぐむ。
「──…………」
うにゅほが、雪のそぼ降る球形の世界に見入っていたからだ。
「……綺麗だな」
「きれい」
「でも──」
スノードームを手に取り、ワイングラスを回すようにゆっくりと撹拌してみせる。
「ほら、激しく振らなくても混ざるから」
「ほんとだ……」
うにゅほが満足しているのなら、細かいことはいいだろう。
ふと、いつか割ってしまったうさぎのオーナメントのことを思い出した。
同じ末路を辿りませんように。



2014年12月6日(土)

「はー……」
冷えきった布団に倒れ込み、深呼吸する。
「飲み過ぎたー……、かも」
「かもじゃないよ」
「……怒ってる?」
「おこってないけど、だいじょぶかなって……」
「大丈夫、大丈夫」
経験的に問題のない酒量だ。
「だって、おさけ、だめになったって」
「ああ……」
いつだったか、そんな会話を交わした記憶がある。※1
「導入剤のせいだって話はしたろ」
「うん」
「あれから処方が変わって、今はあの薬飲んでないんだ」
「そなの?」
「だから、大丈夫……」
ぼふ。
うにゅほの枕に顔をうずめる。
「あ、だめだよ、コートぬがないと」
「うー」
「もう……」
冷たい手が襟元に伸びる、
コートを脱がせようとしてくれてるらしい。
「ん、しょ!」
「──…………」
「◯◯、わらってる?」
「笑ってない、笑ってない」
うにゅほの手を焼かせるのが楽しくて仕方ない。
アルコールを摂取して、すこし退行しているのかもしれない。
心地よさに目蓋を閉じていると、
「──……は」
不意に意識が飛んだ。
上体を起こすと、半纏を着ていた。
「あ、おきた」
「寝てた?」
「ごふんくらいねてた」
「そうか……」
思ったより深酒が効いているのかもしれない
「ねるなら、パジャマきないとだよ」
「わかった」
今度は素直に着替え、こうしてキーボードを叩いている。
ちゃんとした文章になっているか怪しいところだが、日記とはそういうものだとしておこう。
疲れたので終わり。
ほっぺたむにってくる

※1 2014年9月21日(日)参照



2014年12月7日(日)

新しい目薬を購入した。
「こんどのめぐすり、あおいね」
「中身が青いわけじゃないけどな」
「まえのめぐすり、なかみもきいろかった」
「あれは──うん、黄色かった。本当に黄色かった」
初音ミクのパッケージにつられて買ったものだが、白目が黄色く染まるのではないかと心配するほど濃い黄色だった。
「あおいめぐすりは、どんなめぐすり?」
「さあ、よくわからん。とりあえずドライアイに効けばいいから──」
開封し、ロートV11の説明書に目を落とす。
「……あ、ドライアイって書いてない」
「えー」
高ければ何にでも効くと思い込んでしまった。
「まあ、ほら、疲れ目には効くし、ビタミンもたくさん入ってるし……」
「──…………」
「……うん、まあ、とりあえずさしてみる」
うにゅほの視線に耐え切れず、誤魔化すように点眼した。
「く」
目蓋を強く引き絞り、清涼感に耐える。
そして、両目を大きく見開き、視線を左右に振った。
「どう?」
「気持ちいいよ」
効果の差など一度でわかるはずもないが、さっぱりすることだけは確かである。
「わたしもさしていい?」
「ほら、こっち来な」
「うへー……」
ひとりでは目薬をさせないうにゅほが、照れくさそうに傍へ寄ってきた。
「ほら、上向いて」
「はい」
「目を開けて」
「はい」
「……ちゃんと開けて」
「はい」
ぽた。
「!」
うにゅほの両手がぱたぱたと跳ねる。
「これ、きゅーってする!」
「あ、そうか」
そう言えば、うにゅほはクール系の目薬が苦手だったっけ。
「……うー」
「悪い、忘れてた」
「めがもしもしする……」
「でも、さっぱりしたんじゃないか?」
「した……」
効くことは効いたらしい。
「めぐすり、なんできゅーってするんだろ」
「その感覚が好きな人が多いんだよ」
「ふうん……」
いまいち納得がいかないらしい。
人それぞれである。



2014年12月8日(月)

昨夜、日付が変わったころのことである。
「──……◯◯ぃ」
うにゅほが寝床から起き上がり、か細い声で俺の名を呼んだ。
「あしさむい……ねれない……」
「靴下──は、ちゃんと履いてたか」
「うん……」
うにゅほは、すこしだけ冷え性の気がある。
靴下嫌いのうにゅほだが、こればかりは仕方ないと諦めているようだった。
「湯たんぽ出そうか」
「ゆたんぽ……」
しばし考え、
「──……いい」
ゆっくりと首を振る。
「そっか」
たぶん、そう答えると思っていた。
湯たんぽが原因で低温やけどを負ってから、使いたがらなくなってしまったのだ。※1
「ストーブつけて、あたっときな。俺はスープ作ってくるから」
「ありがと……」
中華スープの素をお湯で溶いて卵を落としながら、俺は思案に耽っていた。
方法はある。
ただ、それが安全かどうかがわからない。
「……試す価値はある、と」
「?」
「スープ美味いか?」
「うん、おいしい」
喉が渇かないよう、薄味にしてみた。
「湯たんぽの代わりになるものが、ひとつだけあるんだけど……」
「なにー?」
「布団乾燥機」
半年前に購入した布団乾燥機は、マットやホースの必要ない送風機型のものである。
「あたため機能ってのがあって、本当は寝る前に布団を暖めておくための機能なんだけど……」
これを足元に設置すれば、湯たんぽに近い役割を果たすはずだ。
「おー、あたまいい」
「またヤケドしたら困るから、熱いと思ったらすぐ起きるんだぞ」
「はい」
タイマーを三十分にセットし、送風口を布団の最下部に差し入れる。
本体がちいさく唸り、
「あ、あ、あったかい、あったかいよー」
「眠れそうか?」
「うん!」
しばらくして様子を見に行くと、
「──……すぅ」
見事に爆睡していた。
布団乾燥機万能説、提唱の瞬間である。

※1 2013年1月20日(日)参照



2014年12月9日(火)

夜より薄い紺色の世界に、しんしんと雪が降り積もる。
あるいは美しいのかもしれない光景を前に、俺は思わず口角を下げた。
「うー、わー……」
「つもったねえ……」
「……これは、あれだ。例のあれをしなければ」
「ゆきかき?」
「そう、そのそれ」
雪かきという単語すら口にしたくない。
「行くか……」
「うん」
のそのそと防寒着を着込み、寒空の下へと踏み出した。
「はー……、寒い寒い寒い」
「うんどうしたら、あったかくなるよ!」
元気である。
若さだろうか。
雪かきの勘を取り戻そうと、ジョンバで景気よく粉雪を跳ね飛ばしていたときのことだった。

【──……▼▼を、△△▼▼をよろしくお願いします!!】

不快なハウリングと共に、街宣車のスピーカーが候補者の名前を連呼し始めた。
「うっさいなあ……」
「せんきょ?」
「ああ、選挙選挙」
右手をぱたぱたと振り、そう答えた。
選挙自体に是非はないが、騒音行為は苛立たしい。
「△△▼▼、だって」
「ああ……」
一分間に五回も六回も名前だけを連呼するものだから、うにゅほが覚えてしまったじゃないか。
「△△▼▼にいれる?」
「さあ、どうしようかな……」
騒音公害じみた選挙活動をするような輩に一票を投じたくはないのだが、残念ながら判断基準はそこではない。
「とりあえず、その△△って人の所属政党を調べて──」
そこまで言って気がついた。
「……政党名すら言ってなかったぞ、△△▼▼」
「?」
「名前しか言ってなかったよな?」
「うん」
あれ、街宣車による所属政党名の連呼って公職選挙法で禁止されてるんだっけ。
そんなはずないよなあ。
「……なんか、よくわかんないな」
「◯◯もわかんない?」
「ああ」
「へえー……」
うにゅほが、意外そうに目をぱちくりさせた。
そんなに物知りに見えているのだろうか。
雪かきを終えたあとは、体がぽかぽかして暑いくらいだった。
しなくていいなら、絶対にしないけれど。



2014年12月10日(水)

「ただいまー」
「おかえりー!」
帰宅を告げながら玄関をくぐると、元気の良いうにゅほの声が階段の上から返ってきた。
「ぎんば、いれた?」
「ああ」
「みして」
「上の奥歯なんだけど……」
とりあえず、口を開いてみる。
身長差があるから見えるかもしれない。
「どれー?」
「ひはりの、おくはら、にはんめのは」
「これ?」
「あが!」
口のなかに思いきり指を突っ込まれ、思わず後ろによろめいた。
「そんなもん、わかるか!」
「はぶ」
うにゅほの顔の下半分を軽く鷲掴みにし、やわやわと力を篭める。
「うぶぶぶ」
「なにか言うことは?」
「ほめんなはぶ」
「よろしい」
うにゅほを解放する。
「指を入れるなとは言わないけど、急に入れるなよ」
「ごめんなさい……」
反射的に噛んでしまうかもしれないし。
「ともあれ、これで固いもの食べ放題だぞ」
「たべたいの、あるの?」
「特にない」
そもそも、年末年始に向けての体重調整中である。
「強いて言うなら、飴玉を舐めずに噛み砕けるくらいかな……」
「あめ、なめたほういいとおもうよ」
「俺もそう思う」
砕く砕かないは別として、できるとできないとでは随分と勝手が違うものだ。
「××も、虫歯にならないよう気をつけないとな」
「うん」
悪い見本が目の前にいるのだから、うにゅほはきっと大丈夫だろう。



2014年12月11日(木)

「◯◯、なんかあった」
「うん?」
うにゅほが手にしていたものは、一冊の赤い小冊子だった。
「かに」
「……うお、カニかこれ」
どアップすぎて一瞬わからなかった。
「通販のカタログみたいだな」
「これ、つうはんなの?」
「ネット通販の、ネットじゃないやつだよ」
因果が逆転しているような気もするが、そう説明するのがいちばんわかりやすい。
「でんわすると、かにかえるの?」
「カニだけじゃないけどな」
「へえー」
うんうんと頷く。
「──って、これ半分くらいカニの記事じゃんか」
毛ガニ、ズワイ、タラバ、爪の先からまるまる一杯、生もボイルもなんでもござれである。
「カニは別に、なあ」
「うん」
苦笑し、カタログを渡す。
「あ、うしろのほう、いろいろあるよ」
「靴とか時計とかだろ」
「うん、ある」
ふんふんと興味深そうに、うにゅほがカタログをめくっていく。
なにか欲しいものがあったら、クリスマスプレゼントに買ってあげようかな。
そんな能天気なことを考えていたときだった。
「◯◯、これなにー?」
「どれ」
大きく開かれたページを覗き込む。
「はいぱわー、ぴすとんしき、でんどうおな──」
「チょ↑おッ!!」
思いきり声を裏返しながら、慌ててカタログを奪い取った。
なんで!
そんな!!
ものが!!?
慌てて目次を繰ると、ナイトサポートグッズなる文字列が目についた。
このやろう。
「……工具だよ」
「そなの?」
まさか性具とは言えまい。
「××には、あんまり関係ないかな……」
いろんな意味で。
「そか」
100mを一息に走り抜いたような心地で、うにゅほにカタログを返す。
「──…………」
ちょっとだけ何かを察したのか、その冊子が再び開かれることはなかった。
ああもう!



2014年12月12日(金)

散髪の帰り、床屋を経営する伯父からせんべいをふたつ貰った。
「あ、銚子のぬれせんじゃん」
「ぬれせん?」
助手席のうにゅほが小首をかしげる。
「食べてみればわかるよ」
「ぐにぐにしてる」
触っただけでもわかるらしい。
「しけってる?」
「そういうせんべいなんだよ」
「あ!」
うにゅほの頭上に感嘆符がともる。
「ぬれせんのぬれって、ぬれてるのぬれ?」
「そうそう」
「なるほどー」
ぬれせんの小袋を掲げながら、うにゅほがうんうんと頷いた。
「食べてみたら?」
「いいの?」
「俺は、あとで食べるから」
「はんぶんずっこ」
「はいはい」
袋を開き、うにゅほがぬれせんにかぶりつく。
なふ、
というような音がした。
「──……?」
うにゅほが、不思議そうな顔でこちらを見つめている。
「そういうせんべいなんだよ」
なふ、なふ。
「……ねちゅねちゅふる」
「美味しい?」
「あじはおいひい……」
嫌そうに眉をひそめ、黙々と食べ進めていく。
「……はい」
「口に合わなかった?」
残り半分のぬれせんをを受け取り、そう尋ねた。
「おいしかった」
「本当に?」
「なんで?」
うにゅほが、きょとんと問い返した。
「いや、なんか、すごい不味そうな顔して食べてたから……」
「おいしいよ?」
そう見えただけのことらしい。
「──…………」
なふ。
銚子電鉄のぬれせんは、相変わらず美味しかった。



2014年12月13日(土)

「××、今日は晩御飯いいから」
「ダイエット?」
うにゅほが眉根を寄せる。
「そんなやせなくていいのに……」
「痩せたいというより、管理したいんだよ」
「──…………」
言葉よりも雄弁に、よくわからないという顔をする。
「……まあ、それは置いとこう」
「うん」
「単に、友達と食事に行くってだけだよ」
「ふうん……」
うにゅほが視線を落とす。
「……ねんまつだからね、しかたない」
年末はあまり関係ないのだけど。
「なんじくらい?」
「八時半には出るよ」
「なんじくらいにかえってくる?」
「えー……と」
軽く思案し、答える。
「終電もあるし、日付が変わるころには帰ってこれると思うけど……」
「そか」
「遅かったら、寝てていいからな?」
「うん」
「──…………」
たぶん、うにゅほは起きて待っているだろう。
いままでずっと、そうだったから。
「……もし眠れないようなら、あったかい格好しとくんだぞ」
「はい」
「ストーブもつけること」
「わかった」
これで、きっと大丈夫。
そのはずだ。

終電を逃し、帰宅したのは午前0時半のことだった。
「ただいまー……、と」
明かりのない屋内を手探りで歩き、ゆっくりと自室の扉を開く。
うにゅほは、既に眠っているようだった。
「──…………」
安心したような、すこしだけ寂しいような。
カシュッ!
プルタブを引き、まだ温かいココアをすする。
うにゅほのためにと買っておいたものだが、冷めるのを待つくらいなら飲んでしまったほうがいい。
そんなことを考えていたときだった。
「……ん」
もぞ。
敷布団が膨らみ、うにゅほが顔を出した。
「あ、おかえぃー……」
「悪い、起こしたな」
「おきてた……」
起きていようとはしたのだろう。
「……ココア飲むか?」
「のむ」
「飲んだら歯を磨くんだぞ」
「うん」
「──…………」
おかえり。
その言葉ひとつで、帰ってきたことを実感する。
今度は早く帰ってこようと思う。
それはきっと、幸せなことなのだろう。




2014年12月14日(日)

「──××、これ、見に行こうか」
褪せたビデオテープを右手で軽く振ってみせる。
「あ、えんげきぶ!」
「そうそう」
以前、書棚を整理したときに見つけた、高文連演劇発表のテープである。※1
我が家の環境では再生することができなかったため、お預けを食わせてしまっていたのだった。
「……?」
うにゅほが小首をかしげる。
「みに、いく?」
「ああ、家じゃ無理だからな」
「どこいくの?」
「図書館だよ」
市立図書館には視聴覚ブースが設置されており、館内の映像資料を自由に閲覧することができる。
資料の持ち込みは制限されているそうだが、テープの内容を説明すると利用許可が下りた。
「たのしみ」
狭いブースに詰めて坐し、VHS一体型のDVDプレイヤーにテープを挿入する。
青い画面に走査線がゆらめき、真っ暗な映像を結んだ。
やがて、舞台が明転し、制服を着た四人の男女が現れる。
「◯◯、どれ?」
「俺の出番は後からだよ」
「かお、わかんないねえ……」
「遠いし、暗いし、ホームビデオだからなあ」
フルハイビジョンビデオカメラなんて、存在の兆しすらない時代だ。
「かおみたかった」
「卒業アルバム見せたことあっただろ」
「うごいてるの、みたかった」
そんな会話を交わしながらも、脚本は進んでいく。
「あ!」
うにゅほが画面を指さした。
「◯◯だ」
「よくわかるな……」
声を発するまで、自分でもわからなかったくらいなのに。
「ちょっとふとい?」
「体重は変わってないよ。
 肩幅が広いから、衣装を重ね着するとな」
「◯◯、しゃべってる」
「演劇だからな」
「はー……」
うにゅほのテンションが静かに高まっているのを感じる。
しかし──

【……──館は、間もなく閉館となります。貸出手続きがお済みでない方は──】

「あ、やべ」
閉館時刻のことをすっかり忘れていた。
「え、え、これ、どんくらいでおわる?」
「あー……、と」
上演時間は一時間とすこしだったはずだから、
「……あと十五分くらい」
「う」
うにゅほが絶句する。
「なんというか、その、悪い」
「うー……」
名残惜しそうに画面を睨み、
「……またこよう」
と、ちいさな声で言った。
これはもう、有償でダビングサービスを頼んだほうが早いかもしれない。

※1 2014年11月24日(月)参照



2014年12月15日(月)

「××、いいもん見つけたぞ」
「?」
ギャグマンガ日和を読み耽っていたうにゅほが、なんぞとばかりに顔を上げた。
「じゃん」
「あ、プチ──……プチプチ?」
うにゅほが小首をかしげたのは、このエアパッキンが特大サイズだったからである。
「でかい」
「直径およそ三倍として、面積は九倍、体積に至っては二十七倍だな」
「でかい!」
具体的な数字を聞き、より実感が湧いたらしい。
「これ、どしたの?」
「母さんのiPhoneカバーと一緒にダンボール箱に入ってた」
「ほー」
過剰包装と言わざるを得ない。
「潰してみます?」
「……はい」
なんでちょっと恥ずかしそうなんだよ。
「──…………」
うにゅほが、パッキンの一粒に指の腹を添える。
そして、
「ん!」
と、力を篭めた。
ぐに。
粒は弾けず、親指の形に箔を押されただけだった。
「◯◯、プチってしない……」
「真上から潰そうとするからだって」
大きかろうと、小さかろうと、コツは同じである。
「ほら、プチの端から、空気を絞り出すように──」
ぐにい、い、い。
「──…………」
「──…………」
「これは、強い個体だ」
「うん」
別の粒に指を掛け、勢いよく潰す。
パンッ!
「おー!」
通常のエアパッキンより遥かに大きな音がした。
さすが特大サイズ。
「やりたい!」
「やってみな」
「──んッ!」
ぱす。
「その粒はハズレだな」
「つぎ」
ぷす。
「つぎ!」
ぱん!
「お、鳴った」
「んー……」
納得が行かないらしい。
「ほら、指で丸を作るんじゃなくて──」
こうして、親指の付け根が痛くなるまでエアパッキンを潰し続ける俺たちであった。



2014年12月16日(火)

午後四時過ぎのことだ。

──バツン!

と音がして、一切が闇に包まれた。
「……えっ」
「わあ!」
シーリングライトも、ディスプレイも、テレビの電源ランプすら、一瞬で掻き消えた。
停電である。
悪天候のためか、夕刻だというのに恐ろしく暗い。
失われたかもしれない作業中のデータに遠く思いを馳せていると、
「◯◯、◯◯……」
カーテンの隙間からこぼれる薄明かりに照らされて、うにゅほの輪郭がかすかに見える。
助けを求めるように、こちらへと両腕を伸ばしていた。
「大丈夫、ただの停電だよ」
「◯◯ぃ……」
聞いてない。
唐突な暗転に混乱しているらしい。
ちいさくてもいい、とにかく明かりが必要だった。
iPhoneがあれば──
「……ない」
ジーンズのポケットにも、半纏のポケットにも、デスクの周辺にも、ない。
うにゅほが持っているのだろうか。
「××、ポケッ──ぅぶ!」
「◯◯!」
なにかが顔面に押しつけられた。
うにゅほの声が頭上から響いているので、たぶん胸元だろう。
やわこいし。
「ちょ、苦しっ、ぶ!」
「だいじょぶだから、だいじょぶだから……」
聞いてない。
「……ふー」
早々と抵抗を諦めてされるがままになっていると、二分ほどで電力が回復した。
「あ」
「──…………」
うにゅほが、俺の頭を解放する。
「なおった」
「直ったな」
「こわかったねえ……」
「俺のほうは、怖いどころの騒ぎじゃなかったんだけど……」
視界が二重になっている。
役得は役得だが、眼鏡のフレームが歪んでしまったようだった。
「××、iPhoneは?」
「──…………」
ふるふると首を横に振る。
「じゃあ、どこ、に──……」
半纏の裾の、かすかな重み。
改めて右ポケットに手を入れると、
「……あった」
突然の出来事に、俺も焦っていたらしい。
「次があったら、もっと落ち着いて対処しような……」
「はい……」
咄嗟の対応力に欠ける俺たちなのだった。



2014年12月17日(水)

寒波のなか、家路を急ぐ。
随分と遅くなってしまった。
「……ただいまー」
恐る恐る玄関扉を開くと、
「◯◯!」
ドタドタと慌ただしい足音と共に、うにゅほが階段を駆け下りてきた。
「◯◯、だいじょぶだった……?」
「ああ」
今日は、なんとなく思いつきで、胃の内視鏡検査を受けてきたのだった。
無駄に心配を掛けてしまったようだが、検査とは定期的に必要なものである。
「胃も、食道も、綺麗なもんだってさ」
「よかったー……」
うにゅほが、ほっと胸を撫で下ろす。
「でも──」
「でも!」
一瞬で背筋が伸びた。
そこまで一喜一憂されると、非常に言いにくい。
「えー……と、ちょっと気持ち悪いと思うけど、写真見る?」
「◯◯のしゃしん?」
「そう」
「いちおう……」
躊躇いがちに頷く。
コートのポケットから二つ折りにした内視鏡写真を取り出し、うにゅほに手渡した。
「──……う」
「これが胃、こっちが食道、でもってこれが──」
「……だいず?」
うにゅほが指さしたのは、右上の写真だった。
「あー……」
なるほど大豆に見えなくもない。
「これ、鼻の奥にあるポリープなんだよ」
「でっかいよ!」
「大きく見えるけど、実際は5mmくらいのもんだよ」
「じびか、じびかいかないと」
「ああ、行ってきた」
だから帰りが遅くなったのである。
「耳鼻科の先生いわく、
 大きな病院行けば五分で取れるけど、良性だから切除するほどでもないし、三ヶ月したらまた来てください──だってさ」
「はー……」
副鼻腔のポリープと言えば鼻茸が有名だが、それでもない。
よくわからんが無害らしい。
「よかったねえ……」
うにゅほの両手が、俺の四指を包み込んだ。
「心配させてごめんなー」
「うん」
「次は、××も内視鏡やろうな」
「う、……んー?」
固まったあと、首をひねる。
さすがに即答はしかねるようだった。



2014年12月18日(木)

「おフ……」
運転席のドアを開けた瞬間、吐息が白く染まる。
ぬくぬくした車内から一転して、八寒地獄に降り立った気分だった。
「さむさむさむ」
「××、そっちワイパー立てて!」
「はい」
滑らないようにちょこちょこと小股で走り、玄関へ飛び込む。
「ほー……」
「風がひどいな……」
「うん」
気温のわりに冷え込んでいるのは、風の強さと無関係ではあるまい。
「あ、すのーどーむ」
玄関先に飾られているスノードームを振るのは、うにゅほの仕事のひとつである。
「……あれ?」
うにゅほが小首をかしげた。
「すのーどーむ、しろいよ」
「白い?」
肩越しに手元を覗き込むと、サンタ服を着た白熊の周囲に白いもやがかかっていた。
「……これ、凍ってるんじゃないか」
「こおってるの?」
「ちょっと振ってみて」
「うん」
うにゅほが覚束ない手つきでスノードームを回すと、虹色の雪片がかすかに揺らめいたように見えた。
それだけだった。
「あんまうごかない」
「スノードームって、凍るんだ……」
中身の正体が気にかかる。
両手でスノードームを包み込みながら、心底困った顔でうにゅほが言った。
「……◯◯、どしたらいい?」
「ほっといたら割れるかもしれないから、家のなかに入れとこう」
「とける?」
「氷点下じゃなければな」
「ストーブあてなくてもいい?」
「……当てたら危ないから、絶対しないように」
「はい」
この反応を見るに、けっこうお気に入りのスノードームらしい。
クリスマスが過ぎたら部屋に飾ろうかな。



2014年12月19日(金)

仕事で使う地図を印刷していたところ、インクが切れた。
「きれたの、なにいろ?」
「マゼンタだな」
「……なにいろ?」
「赤と紫の中間みたいな色だよ」
「へえー」
うにゅほが、うんうんと頷く。
「──……あ、ろくしょく!」
「うん?」
「インクは、ろくしょく!」
「……もしかして、カラリオのCMか?」
「そう」
そんなフレーズを聞いた記憶がおぼろげにある。
「ろくしょくって、なにいろとなにいろ?」
「ちょい待ち」
ディスプレイの前に戻り、EPSONプリンターウィンドウを開き直す。
「えー、ブラック、ライトシアン、マゼンタ、シアン、イエロー、ライトマゼンタ……」
「……?」
「こっちゃ来い」
手招きし、うにゅほをチェアに座らせる。
「ほら、これが六色」
「……これとこれ、おなじいろ?」
うにゅほが指さしたのは、シアンとライトシアンだった。
「ライトシアンのほうが薄いみたいだけど……」
「いみあるの?」
「あるんだろうけど、よくわからないな」
「へんだねえ……」
「そうだなあ」
小首をかしげるうにゅほを横目に、電源の入った灯油ストーブを慎重にずらしていく。
洋服ダンスの下の引き出しが、A3コピー用紙と予備のインクの保管場所になっているのだった。
「……あれ?」
「!」
俺の肩越しに引き出しを覗き込んだうにゅほが、怪訝そうな声を上げた。
「インク、たくさんある」
「──…………」
とうとう気づいてしまったか。
「……俺、プリンタのインクがないないって探してたよな」※1
「うん」
「ここにちゃんとあった……」
そもそも保管場所に仕舞ってあったものを、見つからないと騒ぎ立てていたのである。
我ながら滑稽としか言えない。
「──…………」
視線が痛い。
「でも、むだにならないものだから……」
「……うん、ありがとう」
優しさも痛い。
今後、探しものをするときは、灯台もと暗しという言葉を常に意識するようにします。

※1 2014年11月20日(木)参照



2014年12月20日(土)

両親の友人の飼い犬を、またしても預かることになった。
三度目ともなると仔犬も慣れたもので、ソファに寝転がる弟の上でまるくなっているのをよく見かける。
「──…………」
自室の扉を薄く開け、うにゅほがリビングの様子を窺っていた。
こちらはいまだに慣れないようである。
「……(弟)、すごいね」
「なにが?」
「てなずけている……」
「あれは手懐けてるんじゃなくて、動かないから電気毛布とでも思われてるんだろう」
「うるさいよ」
聞こえてた。
「……それはともかく、いまなら撫でられるんじゃないか?」
「や」
「長毛で毛並みもいいから、ふかふかしてるぞ」
「う……」
リビングに足を踏み入れ、弟の上の仔犬を撫でてみせる。
「ほら」
「……ほえない?」
「いまは落ち着いてるから、たぶん」
「──…………」
しばし逡巡していたうにゅほだが、
「……!」
決意を秘めた瞳を上げると、仔犬の元へと及び腰で恐る恐る歩き始めた。
「──……ぐ」
届くか届かないかギリギリの位置から、仔犬の背中に手を伸ばす。
「……あ」
「ふかふかだろ?」
「うん、ふかふか……」
仔犬は、気持ちよさそうに目蓋を閉じている。
すこしは苦手意識を払拭できただろうか。
「ふー……」
「大丈夫か?」
「うん、だいじょぶ、うん、もういい」
「あっ──」
うにゅほが、制止する間もなく逃げるように踵を返す。
そのときだ。
──ヒャン!
仔犬が一声鳴き、うにゅほの左足に飛び掛かった。
「ぎゃー!」
うにゅほが常ならぬハスキーな悲鳴を上げながら、全速力で自室へ逃げ帰る。
「……背中を見せたらじゃれついてくるって、言おうと思ったのに」
「兄ちゃん、遅い」
仔犬は、相変わらず、うにゅほの天敵のままなのだった。



2014年12月21日(日)

「あ」
iPhoneをいじっていたところ、間違ってカメラを起動してしまった。
せっかくなので、うにゅほを被写体にしてみよう。
「××、××」
「?」
うにゅほが顔を上げるのを確認し、iPhoneを構える。
「行くぞー」
「う」
「はい、チーズ」
「ふゎい!」
パシャ!
「──…………」
写真を確認すると、案の定手元がぶれていた。
「……××、いつも思うんだけどさ」
「うん」
「どうして、はいチーズのあとにピースするんだ?」
「へん……?」
「変というか、遅い。ほら」
写真を表示させたまま、うにゅほにiPhoneを手渡した。
「右手がぶれて、拳法の達人みたいになってる」
「あー」
「はい、チーズ、カシャ!の流れだから、チーズのズを言い終わるまでにポーズを決めないと」
「そか……」
「あと、ピースサインにこだわる必要はないからな」
「え、そなの?」
そういう決まりだと思っていたらしい。
「膝の上で両手を揃えて小首をかしげながら微笑む、とかさ」
ありがちな構図である。
「ひざ、りょうてで、くびを……?」
両手で首を、どうするのだろう。
「……とりあえず、それを踏まえてもっかい撮ってみるか」
「あ、あ、いい、いい」
うにゅほが慌てて首を振る。
「嫌か?」
「うん……」
「そっか」
写真を撮られるのが好きではないことを知っているので、無理強いはしない。
「──あ、さっきの、けしてね」
「えー……」
もったいない。
「さっきの、め、はんびらきだったから、だめ」
なんだかんだで乙女である。



2014年12月22日(月)

クリスマスが今年もやってくる。
うにゅほと一緒にクリスマスを迎えるのは、もう今年で四度目になる。
「──あ、すべる、すべる」
「ほら、手」
「うん」
繋いだ手に力を篭め過ぎないよう気をつけながら、TSUTAYAの玄関をくぐった。
「あるかなあ」
「たぶん、あるだろ」
毎年、クリスマス・イヴに観る映画がある。
銀河鉄道の夜。
ますむらひろしの漫画作品を原案とする1985年制作の劇場用アニメ映画だ。
うにゅほも俺も大好きで、漫画版などは何度読み返したか知れない。
「♪~」
アニメコーナーに足を向け、去年と同じ棚の前で膝を折る。
「あれ?」
うにゅほが怪訝な声を上げた。
グスコーブドリの伝記は数本あるのに、銀河鉄道の夜がない。
貸出中ではなく、ケース自体がない。
「◯◯、ない……」
動揺した素振りでうにゅほが振り返る。
「……もしかして、在庫処分のほうに回されたのかな」
「ざいこしょぶん?」
「ほら、古くなったDVDを安く売ってるカゴがあっただろ」
「あー……」
随分と古い作品だし、ありえないことではない。
「じゃあ、カゴにある?」
「……見てみよう」
柱に添って置かれたちいさな什器を覗き込む。
予想していた通り、乱暴に並べられたジャケットのなかに求めていたものはなかった。
「──…………」
うにゅほの視線が足元に落ちる。
気持ちはわかる。
痛いくらいに。
「……××、DVD買おう。ネットで注文すれば、もしかしたら間に合うかも」
「うん……」
ここは北海道だ。
二日で届くとは思えないが、そんなことを口にできるはずもない。
「──…………」
DVDを観るだけなら、イヴでなくともいい。
クリスマスであろうと、正月であろうと、なんら構うことはないはずだ。
しかし、俺たちにとって、これはある種の儀式なのである。
失意と共に帰宅し、とりあえずAmazonでDVDを注文したあと、俺は解決策を模索し続けた。



2014年12月23日(火)

「××、あれからすこし考えたんだけど──」
「?」
Googleマップが表示されたディスプレイを指し示す。
「普段行かない、遠いレンタルショップで探すしかないと思う」
「あるかなあ……」
「──…………」
うにゅほの髪に指を通し、ぐりぐりと頭を撫でた。
「いちおう、ルートも調べてみた」
「うん」
マウスカーソルを動かし、マップ上の赤いマーカーを一筆書きで辿っていく。
「こう、北区から大回りしていくと、TSUTAYAとゲオ合わせて五軒は巡れそうだ」
「ごけん!」
「五軒もあれば、見つかる気がしないか?」
「うん、する!」
うにゅほの顔が喜色に染まる。
「──よし、ちょっと長いドライブになるから、しっかり装備を整えて行こう」
「わかった」
服を着替え、寝癖を直し、マフラーを巻き、コートを羽織り、手袋を持ち、財布を確認して、ふたりで家を出た。

一軒目で見つかった。

「みつかったね」
「ああ」
「よかった……」
「そうだな」
もちろん嬉しい。
嬉しいのだが、肩透かしを食った感は否めない。
「……なんか、時間空いちゃったな」
「うん」
「このまま適当にどっか行こうか」
「うん、いく」
当初まわるはずだったルートを軽くかすめながら、ゲームセンターや書店などに立ち寄った。
夕暮れ時に帰宅すると、銀河鉄道の夜のDVDを発送したというメールがAmazonから届いていた。
来年はこんな苦労をせずに済みそうである。



2014年12月24日(水)

不二家でクリスマスケーキを受け取ったあと、セブンイレブンへと立ち寄った。
「なんか、甘いもの食べたい」
「ケーキあるのに」
「あるけど、まだ食べられないだろ」
「あ、そだね」
とは言え、なにもガッツリ食べたいわけではない。
「これがいいかな」
「ぎっしりナッツのぶらうにー?」
「美味そう」
「うん、うまそう」
プロテインドリンク用のアップルジュースが入ったカゴに、ブラウニーをそっと入れる。
「あ、チューハイ買っていい?」
「えー……」
「年末年始くらい大目に見ておくれよ」
「いいよ」
「よしよし」
「うあー」
うにゅほの頭をぐりぐりと撫でる。
「あと、なんか飲みたいな」
「コーヒーのみたい」
「ブラック? カフェオレ?」
「コーヒーぎゅうにゅう」
「はいはい」
甘そうなコーヒー牛乳を適当に放り、レジへと向かった。
「──合計で1,224円になります」
「はい」
千円札を指に挟んだまま、小銭入れを開く。
百円玉は三枚ある、十円玉はない、一円玉は──などと勘定をしていたとき、
「……◯◯、◯◯」
「うん?」
うにゅほが俺の袖を引いた。
「せんにひゃく、にじゅうよえん」
「──……?」
「きょう」
「……あ、12月24日か!」
だからなんだと言うこともないが、クリスマス・イヴに地味な奇跡が起きた瞬間だった。

ホワイトクリスマスという名のドカ雪に見舞われたため、雪かきにかなりの時間を取られてしまった。
日記を書き終わり次第、銀河鉄道の夜を観ようと思う。
楽しみだ。



2014年12月25日(木)

「◯◯、メリークリスマス!」
「はいはい、メリクリメリクリ」
右手をぱたぱたと動かし、うにゅほを適当にあしらう。
「つめたい」
「昨夜もう言ったからね」
「そだっけ……」
銀河鉄道の夜がエンドロールを迎えるころには既に爆睡していたので、そのあたりのことはほとんど覚えていないのだろう。
夜更けの雪かきの後だったから、無理もないけれど。
「そんな××に、いちおうプレゼントがあるんだけども──」
「え!」
うにゅほがソファから腰を浮かす。
完全に予想外の出来事だったらしい。
「いや、でも、かなり冒険と言うか、××が喜ぶものかどうかわからないんだけど……」
自分の声がちいさくなっていくのを自覚する。
「なに、なに?」
「……ゲーム、なんだけど」
「げーむ?」
小首をかしげる。
「××、アプリでしかゲームしたことないよな」
「うん」
「でも、ゲーム自体は嫌いじゃないだろ」
「すきだよ」
「スマブラとかカービィがいいかと思ったんだけど、3DS一台しかないから対戦できないし……」
「──…………」
「だから、ひとりで遊べるRPGがいいかと思って」
「なにー……?」
痺れを切らしたらしいうにゅほが、ソファに再び腰を埋める。
「……はい」
デスクの引き出しを開き、DS用のソフトを手渡した。
「くろのとりがー……」
「俺が子供のときにやったゲームのなかで、絶対に面白いって断言できる作品のひとつ、なんだけど」
「あーるぴーじーって、てきたおすやつ?」
「そう」
「はー……」
パッケージを眼前に掲げ、物珍しげにくるくると裏返す。
「──……◯◯」
うにゅほが静かに口を開いた。
「ありがと!」
「……どういたしまして」
うーん、RPGってうにゅほの肌に合うんだろうか。
説明書を熟読するうにゅほの姿を眺めながら、ちょっと不安になるのだった。



2014年12月26日(金)

「十字キーで移動」
「はい」
「Aボタンで決定」
「はい」
「Bボタンがキャンセル」
「はい」
「他のボタンは、実際にプレイすればわかると思うよ」
「ふうん……」
うにゅほに3DSを手渡す。
「この、でっかいボタン、なに?」
「でかいボタン?」
「これ」
うにゅほが示したのは、3DSのスライドパッドだった。
ボタンに──まあ、見えなくもないか。
「使うゲームもあるけど、今回は気にしなくていい」
「そか」
うんうんと頷く。
「それじゃあ、右下のPOWERってボタンを──」
覚束ない手つきで、うにゅほがクロノトリガーを起動する。
「あ、あ、なんかでた」
「タイトルな」
「とびでない」
「3DS用のソフトじゃないからな」
「……?」
「ほら、ニューゲーム選んで」
「はい」
画面が切り替わる。
「げーむもーど……」
「後でどうにでもなるから、ここは飛ばそう。画面下のSTARTってところを押して」
「はい」
今度は、名前入力画面が表示された。
「くろの」
「ここで、主人公の名前を決めることができます」
「きめれるの?」
「でも、ここは──」
「◯◯のなまえにしていい?」
「──…………」
しばし思案し、
「……ちょっと恥ずかしいから、それは勘弁してほしい」
と答えた。
「そかー」
残念そうに笑う。
「ここは、そのままクロノでいいと思う」
「はい」
頷いた直後、
「あ」
うにゅほがちいさく声を上げた。
「くろのあになっちゃった」
3DSを覗き込むと、入力欄に「クロノあ」と表示されていた。
誤ってAボタンを押してしまったらしい。
「どうしよう……」
「Bボタン」
「……あ、なおった」
ゲームをプレイしたことのない人間に操作方法を教え込むのがここまで大変とは思わなかった。
当のうにゅほに負けず劣らず、こちらも新鮮な気分である。



2014年12月27日(土)

「××、図書館行くぞー」
「はーい」
コートを羽織り、外へ出た。
久方振りに太陽を拝んだ気がする。
ここのところ、記録的な豪雪が続いていたからなあ。
すっかり道幅が狭くなってしまった幹線道路を走りながら、助手席のうにゅほに話しかけた。
「年またぐけど、なんか読みたいのあるか?」
正月と言えば、やはり、テレビや読書に耽りながらだらだらと過ごしたいものである。
「よみたい、ほ、んー……?」
困ったように大きく首をかしげるうにゅほの姿を見て、愚問だと気がついた。
「えーと、どんな種類のっていうか、大まかでいいぞ大まかで」
「まんが……」
さいですか。
「──あ、アタゴオルよみたい」
「好きだなあ」
「すき」
銀河鉄道の夜を観て、ますむらひろし熱が再燃したらしい。
全巻揃えてしまおうかとも思うが、シリーズが小分けされていて手を出しづらいのが実情だ。
そんな会話を交わしながら、市立図書館に続く小路へとハンドルを──
「──えっ」
「わ」
慌ててブレーキを踏み込んだ。
道が、なかった。
図書館へと続く道路が雪没し、あたかも廃墟であるかのような光景が眼前に広がっていた。
「すごいな……」
「うん……」
しばしふたりで呆けたあと、
「──すいません、図書館って、やってないんですかねえ!」
運転席のウィンドウを開き、同じく立ち往生していた男性に話しかけた。
「あの、除雪がまったく間に合ってなくて、車では入れないんです! 申し訳ないです!」
口振りから察するに、図書館の職員らしい。
「今日は、臨時休館ってことですか?」
「いえ、開けてはいるんですが──」
視線が揃う。
腰までの積雪を無理矢理に分け入ったような跡が、一筋あった。
「……また来ます」
「はい……」
チェンジレバーをRに入れ、その場を後にした。
「仕方ない、また今度にしよう」
「うん」
「年内に行けないと、返却期限がな……」
うにゅほの膝の上にある二冊のハードカバーに視線を落とし、俺は溜め息をついた。



2014年12月28日(日)

「きょう、にじゅうはちにち」
うにゅほがカレンダーを指さし、数えた。
「いち、に、さん、よん」
「残り四日か……」
一年のあまりの短さに、くらりと目眩を覚えた。
「おおそうじしないと!」
「ところで──」
鼻息の荒いうにゅほを制し、デスクの引き出しから二つ折りのコピー用紙を取り出した。
「大掃除に関して、ひとつ相談があるんだ」
「そうだん?」
うにゅほが訝しげに小首をかしげた。
「まず、これを見てくれ」
コピー用紙を広げる。
「しかく?」
「これは、俺たちの部屋の上面図だ」
「じょうめんず」
「上から見た図のこと」
「ふうん……」
「そして、こっちが──」
三枚の紙片をデスクに置いた。
「デスク、ソファ、しょうたんす」
「そのみっつが、現実的に移動可能な家具──ということになる」
縮尺は完璧に揃えてある。
抜かりはない。
「つまり、模様替えをしようかと思うんだが、いまいち配置が決まらなくてな」
「……もようがえ、するの?」
うにゅほが不満そうに口元を歪ませる。
変化を好まない、というより、恐れているようなふしがあるからなあ。
しかし、
「する」
「するの……」
「……チェアが壁際だから、寒いんだよ。ストーブの温風も届かないし」
「あー」
「テレビも後から置いたから、ソファに座ってると見れないし」
「うー……」
問題点がぼろぼろ出てくる。
「ほら、この上面図と家具を使えば、パズルゲーム感覚で配置を決められるだろ?」
「げーむ……」
あ、ちょっとやる気が出てきた。
「さむいの、だめだね」
「だろ?」
「じゃあ、デスクここ?」
「そこだと本棚の下のほうが──」
「とおりみち──」
「なんか受付みたいに──」

ディスカッションは三十分に及び、
「──できた!」
「うん、これしかない」
デスクを壁際から離し、ソファの位置を直し、本棚の犠牲も最小限で済む配置図である。
「あとは、実行するだけだな」
「──…………」
うにゅほが、デスクの縁を軽く撫でた。
「……これ、うごかすの?」
「ああ」
「うごかせるの?」
「弟を召喚するから、一時間もあれば終わるだろ」
その目論見が大甘に甘かったことを、その四時間後に痛感するのだった。
部屋は素晴らしく快適になったが、同時に力尽きた。
大掃除はまた明日である。



2014年12月29日(月)

布団乾燥機のスイッチを入れ、軽く伸びをする。
「終わった──……、あ!」
「おつかれさま」
「××も、お疲れさん」
昨日の模様替えの際、やむを得ず掃除機を使う場面が度々あったため、大掃除は幾分か楽だった。
「手がプルプルしてる」
「だいじょぶ……?」
「ハンディクリーナーが重かっただけだって」
苦笑し、震えていない左手でうにゅほの頭をぎこちなく撫でた。
「──さーて、まだ日が高いけど、どうしようかな」
年内に済ませるべきことは、まだ幾つかあったはずだ。
「あ、としょかん」
「あー、図書館な」
一昨日の惨状を思い返す。※1
「……さすがにもう、除雪入ってるよな」
「たぶん……」
市の施設なのだし、開館休業のまま放置したりはしないだろう。
それに、
「そろそろ本当に返さないと……」
二冊のハードカバーに視線を落とす。
実を言うと、昨日が返却日だったのである。
「──…………」
うにゅほがカレンダーを覗き込み、
「きょう、やってるかな……」
と呟いた。
「やってるだろ」
「ちがくて」
うにゅほがふるふると首を振り、言葉を継いだ。
「きょう、げつようびだから……」
「……あー」
年末の忙しさで、曜日感覚が完全に狂っていた。
「あしたいく?」
「明日──……、30日か」
まずいかもしれない。
市民図書館のサイトからカレンダーを呼び出し、確認する。
「……あ、昨日が最後の開館日だった」
「あらー……」
昨日行けばよかった。
まあ、仕方ない。
なにもかも豪雪が悪いんや。

※1 2014年12月27日(土)参照



2014年12月30日(火)

鼻の奥がくすぐったくて、ティッシュを二枚ドローした。
濁音を響かせながら鼻をかんだ瞬間、
すぽん!
そんなオノマトペと共に、鼻道を通り過ぎたものがあった。
「──…………」
薄目を開きながら、ティッシュの内側を恐る恐る確認する。
「おア──ッ!!」
「!?」
思わず叫び声がこぼれた。
「なに、なに!」
突然の出来事に、うにゅほが漫画を取り落とす。
「え、えらいもんが出た」
「なに……?」
「キタナイから見ないほうがいいと思うけど……」
「そんな……」
とは言ってみたものの、ここまで騒がせておいて見せないのも無情である。
「……ほら」
「!」
ティッシュを僅かに開き、中身を覗かせた。
「なにこれ……」
それは、幾重にも折り畳んだオブラートを血と鼻水で溶かしたような、ブドウの皮にも似た半透明の物体だった。
「たぶん、鼻の奥のポリープ」※1
「え、あのだいず?」
「大豆じゃないけど、たぶんそれ」
内視鏡の写真を見る限り、なにかの弾みで取れそうだとは思っていたが、本当に取れるとは。
「ほー……」
つん。
うにゅほが無造作に指でつついた。
「ばッ──」
慌ててティッシュを畳み、丸めてゴミ箱に投げ捨てる。
「馬鹿、汚いっつの!」
「かたかった」
「……いいから、手ー洗ってきなさい」
「はい」
部屋を出る前に、うにゅほが振り返って言った。
「だいず、とれてよかったね」
「大豆じゃないって」
「ぽぷ、ぽり……」
「ポリープ」
自然に取れたことが良いのか悪いのかわからないが、今年の不健康を来年に持ち越さずに済んだのは確かである。
うにゅほ共々、来年は健康でありますよう。

※1 2014年12月17日(水)参照



2014年12月31日(水)

年明けの午前四時半にこの日記を書いている。
すぐ後ろでは、やけにハイテンションなうにゅほがテレビをチラ見しながら俺を待っている。
クロノトリガーを進めたいのだそうだ。
大晦日からこれまでの出来事を簡単に綴り、2014年最後の日記としよう。

新春恒例──でもないが、友人と初詣&ゲーセン巡りをする予定が入っていた。
一緒に行くなら昼寝しておいたほうがいいと勧めたところ、午後一時から約六時間という大爆睡をかましてくれた。
午前四時半現在、眠る気配なし。
神社で買った可愛いひつじの土鈴をどこに飾ろうかと迷っているようだ。
ただ、良いことばかりではない。
ゲーセンで見かけた柴犬のぬいぐるみに一目惚れし、二千円つぎ込んでも取れず涙目になるという場面もあった。
ここで俺が取ってあげればカッコいいのかもしれないが、あっという間に千円札が呑まれて消えた。
これは、沼だ。
俺たちはそう判断し、いつか別のところで再会することを願いながらゲーセンを後にしたのだった。
友人に別れを告げ、帰宅し、着替え、酒も入ってるし正直眠いのだが、うにゅほのたまの夜更かしに付き合ってあげたい気持ちもある。
なので、まあ、日記はこれくらいにして、寝落ちするまで遊ぼうかなと。
喪中だけど、あけましておめでとうございます。
初日の出まで起きてます。

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